5月19日は、父の誕生日。
生きていたら、82歳である。
それはさておき、
父の誕生日には、必ず、
フロリダの伯母が電話をくれていた。
お誕生日おめでとうコールである。
これは、もう、ずーっと昔から。
伯母は70年くらい前、
国際結婚でフロリダに移住し、
一時帰国は二回しかしていない。
その割に、姉弟姉妹への電話はまめであった。
(父の兄弟は8人兄弟(姉妹)で、父には、姉二人、兄二人、弟二人、妹一人がいる)、
父の誕生日には、必ず、そう、必ず電話をくれていた。(不在の時もあったが)
それこそ、父が亡くなる前の年の5月19日も、
伯母は父にお誕生日おめでとうコールをかけてきたらしい。(父から聞いた)
しかし、この伯母、すごく変わっているのである。
決して、自分からは話題を提供せず、
決して、話も膨らませない。
にも関わらず、
自ら積極的に電話してくるのである。
私にも、何度かかけてきたことがある。
こちらが話題を見つけ、話し続けないと、会話は途切れて沈黙になる。
だから、こちらが延々と気を遣うわけだが、
叔母は、ただただ、
「あら、そうなの」と「はい、そうです」
を繰り返す。
ちなみに口調は井上陽水で、
どうでもいいが、
見た目は漫画のベティーちゃん。
若い頃は可愛いかったと思う・・。
この伯母とは別に、
テキサスに移住した叔父(父の弟)がいる。
叔父も、かれこれ、50年以上アメリカに住んでいて、
10年以上前に、ワシントンの近くの島に移住し、隠居生活を送っている。
で、この叔父とフロリダの伯母、
アメリカに居る姉弟同士、ずっと仲良くしていたのだが、
最近、事情が大きく変わったらしい。
父の他界を知らせるべく、私が叔父に電話をしたところ、
最近、フロリダの伯母は高齢者施設に入ったが、
認知症なのか、
元来の特質がエスカレートしたのか、
何だかもうよく分からないが・・・
あれだけ頼りにして、
あれだけ仲の良かった叔父(伯母の弟)を悪く言うようになり、
叔父が施設を訪れたら、
「二度と来るな!」と怒鳴られたらしい。
それで叔父は、
「だからね、もう、なかなか会えなくなったよ」と。
ちなみに、叔父の日本語は、
すっかりおかしなことになってしまっているので、
会話は英語である・・・。
フロリダの伯母は、
ちょうど、父が亡くなる前の年くらいから、変わって来たらしい。
父が亡くなった翌月の5月19日(父の誕生日)、
昔から欠かさなかった「お誕生日おめでとうコール」も遂に来なくなった。
しかし、コールしたところで・・・
父はその前の月に他界してるわけだから、出るわけもない。
伯母が国際結婚でアメリカに移住したのは、七十年以上前である。その頃からずっと欠かさなかったお誕生日おめでとうコールを、
自信の脳の都合(?)で、
意図せず、はたとやめた年、
それが、
父が亡くなった年であったことは、
偶然と言えば偶然だが、姉弟の縁かなと思う。
本日5月19日、父が亡くなって三回目の誕生日だが・・・・
ふと、過去の習慣を思い出して今年は電話するとか、
まあ、そういうことも、伯母には起こりそうな気もする。
しかし、実家はすでに売りに出ていて、電話もつながらない。
伯母が父にお誕生日おめでとうを伝えるには、
あの世と交信しなければいけない。
普通に考えれば非現実的だが、
伯母を思うと、やけに現実的に思われる。
あの世の人にも、伯母は
「あら、そうなの」と「はい、そうです」といつもの調子で繰り返しそう・・。